我輩は漱石である〜夏目漱石その1〜
| 今日のゲストはもうすぐサヨナラの千円札の人です。 名前なんだっけ? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩(わがはい)は夏目漱石である。 | |||||
| 夏目漱石 | |||||
| デーモン小暮閣下? | |||||
| りょうこ | |||||
| ム”ァ”−ハハハハハハ・・・・・ 違ーーーーう!! 「我輩」を名乗ったからって、 全部がデーモンではなーーーい!! 我輩は「我輩」を言い出した元祖である!! |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| ああ、元祖我輩さんですか。 | |||||
| りょうこ | |||||
| である。 ところで坊っちゃんが我輩を呼んだのは、 何か用があったのではないかな? |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 私は坊っちゃんじゃないですよ! 女の子です! |
|||||
| りょうこ | |||||
| ああ、虞美人草か。 | |||||
| 夏目漱石 | |||||
| 意味わかんねーーーボケですね。 | |||||
| りょうこ | |||||
| まあそんな事はどっちでもいいとして、 道草をくわずに本題の門にはいろうか。 で?我輩に何が聞きたいのかな? |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そうですねーーー、 じゃ、まず漱石さんが生まれた頃のことから教えて。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩が生まれたのは慶応三年、 翌年には明治が始まっとるから、 我輩は江戸時代の最後の最後に生まれたんである。 それから何が聞きたい? |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そんな生まれた年のことだけじゃなくて、 生まれた場所とか家族構成とか、 もうちょっと詳しく教えてくださいよ。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩の家は今の東京都牛込のあたりにあり、 父親は夏目小兵衛といい、名主をしていた。 我輩は五男三女の末っ子で、 我輩は「金之助」と名付けられたのである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 「金之助」?それが本名なんですか? いかにも「お札の顔になるぞっ!」って感じの名前ですね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| である。 でも我輩は生まれてまもなく、 四谷の古道具屋の子供として里子(養子)に出されたんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| ふ〜ん。 | |||||
| りょうこ | |||||
| で、その古道具屋が忙しい人で、 我輩は子守りもしてもらえず、 商品の古道具と一緒にザルの中に入れられて、 泣いてたんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そこに中島誠之助と安河内眞美が出張鑑定にやってきて、 「いい仕事が金之助ですね〜」 「残念ながらこれは印刷された千円札です」 と言った、っていうオチ? |
|||||
| りょうこ | |||||
| そんなくだらん事言うか!! その話を聞いた我輩の生みの親が、 夏目家に連れ戻したんである。 で、今度は古道具屋でなく、 ちゃんと育ててくれる名主の家に、 ふたたび里子に出されたのである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そうですか。 よかったですね、今度はちゃんとした人で。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| ところがそれから間もなく、 この養父が浮気をしたため、 我輩は養母と一緒にまたまた夏目家に引取られた。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| おやまあまあ、 なんかヒサンな子供時代をおくってますね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| まったく。 我輩の人生、 夢十夜で道草と明暗だらけである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 意味わかんねーーー!! | |||||
| りょうこ | |||||
| で、我輩はこころを切り替えて勉強にうちこむことにし、 府立一中という学校に入学したんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| えらーーい!! | |||||
| りょうこ | |||||
| そして府立一中を中退。 で、次に入った二松学舎も中退。 成立学舎という学校に入った。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| おろ、おろ、おろ、中退、中退って、 ホントに勉強にうちこんだのーーー? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩のこころの明暗は行人知らず。 というわけで、 今度は三四郎池と赤門で有名な、 東大(当時は大学予備門)をめざしたんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| また意味わかんない言い訳を・・・ で?今度は東大に入ろうっていうんですか? あそこはちゃんと勉強しないと入れないんですよ。 わかってる? |
|||||
| りょうこ | |||||
| わかっておる。 我輩の辞書に「猫」の文字はあっても「不可能」の文字はない! というわけで我輩は東大に入れちゃったんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| ホントに入ったの!? それってちょっとすごいかも。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| これで我輩も草枕を高くして寝られる。 | |||||
| 夏目漱石 | |||||
| 今度は中退しなかったんですか? | |||||
| りょうこ | |||||
| 中退はしないけど我輩は病気のため、 留年してしまった。 でも最終的には卒業したんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| すごい!!東大卒ですね。 勉強いっぱいしたんでしょ? |
|||||
| りょうこ | |||||
| いいや、我輩はボートレースを見たり、 落語を聞きに行ったりと、けっこう遊びに行人だった。 我ながらよく卒業できた門(もん)だと思う。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 遊んで東大卒とは・・・ やりますね、漱石さん。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| その「漱石」というペンネームも、 この頃使い出したんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 「漱石」ってどういう意味? どうしてこんなペンネームにしたの? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 漱石とは、 「漱石枕流(そうせきちんりゅう)」からきているのである。 これは昔の中国のことわざで、 本当は「枕石漱流」(川の流れに口を漱すすいで、石を枕にして寝る) というところを、 間違って「漱石枕流」と言ってしまった孫楚という男がおって、 「それじゃ意味が通じない、お前間違えただろーーー」 と指摘した友人に孫楚は、 「いやいや俺は石に口を漱すすいで歯を磨き、 川の流れを枕にして耳を洗ってるんだ。だからこれでいいのだ」 と、自分の間違いをごまかすために、 強引にことわざを変えてしまった。 これ以来「漱石枕流」は「がんこ者」「へそまがり」「負けず嫌い」 という意味のことわざになったんである。 我輩、このエピソードが気に入っていて、 「漱石枕流」の「漱石」をペンネームにしたんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| つまり漱石さんも「がんこ者」「へそまがり」「負けず嫌い」 なんですね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| である。 | |||||
| 夏目漱石 | |||||
| ところで「漱石」の由来はわかったけど、 なかなか小説書く話になりませんねーーー。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩が小説を発表するのは37歳になってからである。 だからもうちょっと道草をくわなくては、 小説の話は出てこないのである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そうですか。じゃあ続きをいきましょ。 東大卒業してからどうしたんですか? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 徴兵を避けるために北海道の住人になったり、 心を落ち着かせようと鎌倉円覚寺で座禅をして、 逆に神経衰弱になってしまったり、 鏡子(きょうこ)という女性と見合いして婚約したり・・・・・・である。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| ちょっと、ちょっと、何やってんですか。 全然落ち着きがない行動してますね。 仕事はしなかったんですか? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 一応東京で英語の先生をしてたんであるが、 その頃たまたま松山(愛媛県)で英語の先生にならないか、 という話があって、我輩よろこんででかけたのである。 坊っちゃん。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| え?鏡子さんていう人と婚約してたんでしょ? その人はどうしたの? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩、松山の次に熊本に転勤になって、 この熊本に鏡子をよんで、ここでこの虞美人草と結婚したのである。 ちなみに我輩が来る前に熊本で英語教師をしていたのは、 あの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)である。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 「小泉」去って「きょうこ」が来るなんて、 偶然にしてはうまいシャレになってますね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩、その意味がわからない・・・ | |||||
| 夏目漱石 | |||||
| わからなくてもいいですよ。 それじゃその後、熊本でラブラブの新婚生活を送ったわけですね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| それが結婚の翌年、 我輩の父親が死んだので一緒に東京に帰る途中、 身ごもっていた鏡子は疲れから流産してしまったんである。 この一件以来、夫婦仲がおかしくなってしまった。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| あらーーー、かわいそうに・・・・・・ | |||||
| りょうこ | |||||
| とりあえず我輩たちは熊本に帰ったのであるが、 鏡子は神経衰弱になってしまい、 我輩はどうしたらいいかわからず、 さそわれるままに山川信次郎という友人と二人で、 草枕の温泉旅行に出かけてしまった。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 何やってんですか!! 奥さんが病気なのにほっぽって自分たちだけ温泉に行くなんて!! |
|||||
| りょうこ | |||||
| 「奥さん」ではない。 「細君(さいくん)」と呼びたまえ。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そんなことどっちでもいいって!! 鏡子さんはそれでどうなったの? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我々が温泉から帰ってからしばらくして、 近所の川に「ぼっちゃん」と飛び込んでしまった。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| え? それって投身自殺したってこと? |
|||||
| りょうこ | |||||
| まあそういうことである。 でも助かって投身自殺「未遂」で終わった。 細君が彼岸過迄行ってしまわなくてヨカッタ、ヨカッタ。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 何のんきなこと言ってるんですか。 鏡子さんが川に飛び込んだのは、 漱石さんにも原因があったんじゃないですか? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 細君のこころは我輩にもわからない。 だからとりあえず細君を抱きしめてなぐさめているうち、 自殺未遂の翌年に長女が誕生しちゃったんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 「しちゃった」って、表現おかしいけど、 まあ、ツッコまないことにしておきましょ。 でもよかったですね、子供さんができて。 これで鏡子さんの神経衰弱もよくなるんじゃないですか? |
|||||
| りょうこ | |||||
| 我輩もそう思って、 また山川信次郎と二人で二百十日の旅にでかけたんである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 何でそういうことするの!? 子供が小さいうちは、母親は子育てで大変なんですよ! ちゃんと子供のこと考えてあげなきゃ! |
|||||
| りょうこ | |||||
| でも子供には、我輩が文豪の娘らしく、 「筆子」と名付けてやったぞ。 これで幸せになれるはずである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そうじゃなくて、子育ても一緒にしなさい! って言ってるの!私は! |
|||||
| りょうこ | |||||
| それもそうだが・・・ 残念なことに、その頃我輩は政府から、 「ロンドンへ留学しなさい!」と命令されてしまったんである。 だから細君と筆子を日本に置き去りにして、 ロンドンへ行人になってしまったのである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| そうなの? 鏡子さんと筆子ちゃん、かわいそう・・・・・・ |
|||||
| りょうこ | |||||
| 政府の命令では仕方ないのである。 我輩のこころの門も明暗にぼっちゃんと落ち込み、 それから、彼岸過迄、道草をくっているような・・・ 要するに、我輩は猫である。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| 何かもう言ってることが支離滅裂ですね。 それじゃ長くなったんで、 漱石さんがロンドンに行ってからの話は、 その2で聞かせてくださいね。 |
|||||
| りょうこ | |||||
| 虞美人草、それから道草をくわないように。 それでは今回は一、二、の三四郎でお別れである。 |
|||||
| 夏目漱石 | |||||
| もういいってば!! | |||||
| りょうこ |
|
|
||
| ひのもとあや先生の一口寸評 | ||
|
|
||
| 対談中にもあるように、 漱石さんが小説を発表したのは37歳と、 遅いデビューでした。 それまで漱石さんはけっこう波乱万丈な人生をおくっていますが、 それなりに人生を楽しんでいたようです。 今回の対談はロンドン留学が決定したところまでで一区切りしていますが、 続きはどうなるのでしょうか? 次回も読んでくださいね!! |
||